テクマクマヤコン

 12月第二木曜。

前日夕方からお休みを頂き、東京へ。

10月より2か月に渡り、通信教育にて事前課題に取り組むというこれまでにないセミナーに参加してきました。

その名も「ミラーテクニック道場」

歯科治療において必需品である歯鏡(デンタルミラー)。歯科医師となったその日から使わない日はなかった道具であり、10年間も使用していて何を今さら…と思われるかもしません。

ただし、今回はミラーテクニックはミラーテクニックでももう一つ条件があります。

「不可能を可能にする」マイクロスコープを使用時のミラーテクニックです。正確には、ミラーテクニックを上手く活用することで、マイクロスコープ診療が不可能を可能にすると言った方が正しいでしょう。

お口の中を明るく大きく映しだしてくれるマイクロスコープですが、じつはこのマイクロスコープ単体ではその実力の半分も発揮できません。

光は直線的にしか進まないという性質があります。そのため、マイクロスコープ下での視野は常に一方向から、しかも拡大される分非常に限局されたものになります。そこでレンズを通して直接見える視界をより広げるのに非常に役立つのが、デンタルミラーなのです。鏡を用いて様々な角度から照準を合わせることができます。

このデンタルミラーを使用するだけで、一方向から多方面へのアプローチが可能になります。実際には、ただ見るだけでなく、歯を削ったり、クリーニングの際にお口の中では多量の水しぶきが発生します。その水しぶきに対応しながら鏡を用いて視界を確保し、一本の歯を様々な角度から確認するためにはミラーをどの場所に配置するかが非常に大事になります。

今回のセミナーでは、「ミラーを通して歯を削る」という訓練を通して、ミラーテクニックを習得することが目標です。

しかし、実際にはミラーを通して見るだけでなく、ミラーを通して歯を削るという動作には、上下、左右、あるいは上下左右が逆さになるという事象が起こります。この反転という事象が、物事を一気に難しくさせます。

鏡を見ながら、歯を磨いたり、髪をといたり、髭をそったりということは普段から日常的に行っていると思います。

しかし、鏡を見ながらそのような行為を行う際、(実際には起こり得ませんが)自分が鏡の中に入りこんで、そこからさらに鏡を見て同様の行為をそのまますることができるでしょうか?

鏡を用いることにより、反転する世界の中で自分の思うように手を動かすことは思っている以上に難しいものです。そしてそれが、刃物で、なおかつ非常に狭い範囲で行われるのであれば、その難易度が格段に上がることは想像に難くないと思います。

今回のセミナーでは、顕微鏡(マイクロスコープ)治療においてなぜミラーが必要であるのかという理論から、実際にミラー下での治療においてのポイントを押さえながら、実習を通して丸一日ご指導いただけるという本当に貴重な機会でした。

拡大視野下で、しかも様々な角度から歯(標的)を確認しながら処置できるということは、裸眼での場合に比べて非常に精度の高い治療ができるということに他なりません。(もちろん技術的鍛錬は必須です!)

自分自身、まだまだ鍛錬が必要ですが、今回のセミナーでその理論や訓練の方法等をしっかり学ぶことができました。マネキン模型を用いて一生懸命鍛錬します。

その積み重ねが、「不可能を可能にする」マイクロスコープ診療となると思いますし、それをしっかり日常診療に落とし込んでいきたいと思います!

題名の「テクマクマヤコン(テクニカル・マジック・マイ・コンパクトの略らしいです)」

昭和生まれの方ならご存知かと思いますが…

アッコちゃんは、コンパクトミラーを通して様々なものに変身します。

我々もミラーを通して見る「歯」がどのような状態であっても、出来る限りもともとあった状態に変身できるような、そんな質(精度)の高いテクマクマヤコンな治療が提供できるよう努めていきます。